2019年7月31日

賃料の振込手数料について

スタッフコラム(中瀬)

この記事は 4分10秒 程で読んで頂けます。

いつもお世話になっております。
プロパティマネジメント事業部の中瀨と申します。

今回のコラムは、私が担当させて頂きます。

今回は、賃料の振込手数料についてのコラムとさせて頂きます。

収益物件においては、物件の売買による所有者変更や、管理会社変更の際など、毎月入居者様から受領する賃料の振込先口座の変更が伴う事も多くあるかと存じます。

弊社におきましても、新たな管理受託時、賃料の振込先口座が変更となる事で、これまで振込手数料のご負担が無かった方や、賃料振込の為に入金先と同じ銀行で口座を作られた入居者様より、振込手数料の負担についてお問い合わせを頂く事が多々ございます。

入居者様としては、所有者側の都合で賃料の振込先が変更になるのに、何故入居者側が手数料を負担しないといけないのか、所有者側でその費用を負担すべきではないか、といった心情が有るからです。

通常、賃料の支払い方法については、ほとんどの場合賃貸借契約書に明記されておりますが、振込の場合、手数料負担については記載が無いものもございます。

このような場合、振込の際発生する手数料については、賃貸借契約上どのように扱われるのでしょうか。

 

弊社顧問弁護士の見解を交え、紹介させて頂きます。

民法では、債務の弁済について、次の条文がございます。

◆第484条(弁済の場所)
弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。

◆第485条(弁済の費用)
弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

第484条により、賃貸借契約上特別な合意がない場合には、入居者様からお支払頂く賃料については、原則として債権者(貸主)の住所において支払われる『持参債務』に該当し、振込の場合には、本来持参すべき賃料が、貸主側の指定する口座に約定賃料額通り入金された時点で、全額弁済がなされた事となります。

また、振込手数料は第485条の『弁済の費用』に該当する事から、原則として債務者(入居者様)の負担となります。

その為、『振込手数料を貸主の負担とする』などの合意もなく入居者様が振込手数料を差引いた額を入金されても、その差引かれた振込手数料分の賃料が不足している状態となります。

 

しかしながら、あくまで原則としてのお話ですので、実際に入居者様からのお問い合わせが有った場合には、その入居者様の居住年数や、契約条件などを鑑み、オーナー様にも相談させて頂いた上で、退去のリスクを回避する為に入居者様側に振込手数料の負担を免除したり、手数料相当額の賃料を減額する場合などもございます。

特に、居住年数が長い入居者様は、現在の相場よりも高い賃料で契約されてる方もいるので、振込手数料の免除や、賃料の減額交渉で決裂し、その方が退去された場合には、オーナー様が負担されるお部屋の原状回復工事費や、預かり敷金の返還、次回募集時賃料の下落や新規契約の際の仲介業者様への報酬の支払いなどを考えると、オーナー様にとって不利益となる場合も大いにございます。

 

また、入居者様に対し振込手数料の免除や賃料を減額する場合には、入居者様との間で覚書を締結し、合意内容を明文化しておく必要がございます。

その中で、他の入居者様にお話が広がると収集がつかなくなってしまいますので、合意内容に関して、他の入居者様に他言しない旨のお約束をして頂く必要もございます。

加えて、トラブルを回避する為にも、お部屋の新規契約の際には、賃貸借契約書に賃料の振込手数料・引落とし手数料を借主の負担とする旨を明記しておく事も必要かと存じます。

 

いずれにしても、入居者様からのお問い合わせが有った場合には、杓子定規に対応するのではなく、ご理解頂けるよう粘り強くお話をする事が重要と思われます。

上記のような場合、最終的にはオーナー様の御判断にはなりますが、法的な面だけではなく、様々な角度から検証を行った上で、何がオーナー様にとってのベストな選択かを考える必要もあると思います。

今回のコラムは以上となります。
最後までお読み頂き、誠に有難うございます。