2015年3月18日

【判例】  賃料を立替済みでも「賃料不払いに基づく賃貸借契約の解除を認める」

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平成25年大阪高裁での判決です。
これまでは保証会社の代位弁済により債務不履行がなくなれば、賃貸借契約を解除できないという弁護士や下級審裁判所も存在していました。その中での今回の判決は注目に値する事例です。

 

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<概要>
賃貸人が賃借人による賃料の不払いを理由として、賃貸借契約を解除したとして、建物の明渡しを求めた事案。
賃貸借契約に基づき生じる債務については、保証会社が保証人となっていた。

 

まずは、裁判の経緯について説明しましょう。

賃借人は、平成23年12月にマンションを契約しました。保証会社とは、滞納が発生した場合、月額賃料等の12ヶ月分(訴訟が提起された場合は、訴訟提起時の滞納額に加え、月額賃料等の10ヶ月分相当額)を上限として支払う旨の保証委託契約を締結しました。
賃借人は翌年の平成24年2月分から滞納を始め、同年4月分から8月分までの賃料等を支払わなかったため、家主が支払い催告と契約解除の意思表示、さらに建物の明渡しを求める本訴を提起しました。

一方、保証会社は保証委託契約に基づき、不払いであった平成24年4月分から8月分までの賃料等の代位弁済を行いました。

 

賃貸人の本訴提起に対し賃借人は、保証会社の代位弁済により賃料等の不払いはなく、契約では2ヶ月以上賃料を滞納した場合に契約を解除できるところ、第1審が行われた時点で賃料等の滞納は1ヶ月に過ぎないと対抗しました。

下級審の判決では、賃貸人の契約解除に基づく建物の明渡しならびに保証会社が代位弁済をした求償債務及び保証事務手数料の支払い請求を容認しました。
そこで賃借人が不服として控訴、本判決に至ります。

 

大きな争点は2つ

1. 契約解除事由が存在するか否か

2. 信頼関係の破壊があるか否か

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まず1.契約解除事由が存在するか否かについて、大阪高裁の判断は以下の通りです。
「賃借人は平成24年4月分から平成25年3月分までの賃料等を支払っていないことが認められる。よって、賃貸人は、本件賃貸借契約を解除することができる。」

保証会社が賃貸人に対し代位弁済をしている事に対する判断については
「保証委託契約に基づく保証会社の支払いは代位弁済であって、賃借人による賃料の支払いでは無い。従って債務不履行の有無を判断するにあたり保証会社による代位弁済の事実を考慮する事は相当では無い。」として訴訟提起時点において賃貸人が賃借人に対して請求すべき債務がありませんでしたが、あくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって、賃借人の賃料の不払いという事実は消えず、賃貸借契約の債務不履行には変わりないという判断が下されました。

次に2.信頼関係の破壊があるか否かについて、大阪高裁の判断は以下の通りです。
「賃借人が賃貸人に対する賃料等の支払いを怠っていることからすると、本件賃貸借契約について、賃貸人と賃借人の信頼関係は破壊されているものと認めるのが相当である。」と判断されました。

1.2共に賃貸人側の主張が認められる結果となりました。

 

この高裁判決を受けた賃借人側は上告及び上告受理申立を実施しましたが、最高裁はこれを受理しませんでした。

保証人となる身寄りがない人が賃貸住宅を借りることができるように、核家族化が進む日本の社会に必要な保証制度ですが、一方では、保証会社が賃料を立て替えている間は、賃借人の賃料未払いがあっても、賃貸借契約を解除できない法的構成を悪用する人が出ています。悪用する人が頻出すれば保証会社制度が成り立たなくなります。

この判決は保証制度を悪用する賃借人の頻出を防ぎ、保証制度を守る判決と言え、賃貸住宅業界に大きな影響を与えるものと言えるのではないでしょうか。