2013年5月22日

【任意売却の事例】  賃貸借契約の修繕義務

スタッフコラム(木戸)

この記事は 2分54秒 程で読んで頂けます。

過去に進めていた任意売却の案件の中で賃貸借契約の修繕義務について調査する事がありましたので、皆様へお伝えしたいと思います。
進めていた案件事例は、建物2棟を売主が一名の賃借人へ一括貸ししており、2棟の建物はかなり古く、建物の構造上主要な部分や給排水設備を含めいつ不具合が出てもおかしくない状況でした。
また、賃借人と売主は知人と言う事で契約書を締結しておらず、口頭で契約行為を行っている状況でしたので、売買と同時に買主様と賃借人と新規で賃貸借契約を締結する事となりました。

そのような建物だった為、買主様の買付条件として賃借人との賃貸借契約で、修繕義務は一切負わない事が条件となっておりました。
配管が壊れても、雨漏りをしても当然賃借人が修繕する事となります。

しかし、民法606条では「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と規定されております。お金を貰っている以上は、使用出来るように賃貸人が修繕義務を負うという内容です。

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今回のケースで言えば、賃貸料を貰うのに一切の修繕義務を負わないような契約内容が有効なのかが焦点となりました。

弁護士へ確認したところ、民法606条は任意規定なので特約で修繕義務を賃借人の負担とする事は可能との事でした。
しかし過去の最高裁判例では、賃貸借契約書に記載された「入居後の大小修繕は賃借人がする」旨の条項は単に賃貸人が民法所定の修繕義務を負わないとの趣旨にすぎず、賃借人が家屋の使用中に生ずる一切の汚損、破損箇所を自己の費用で修繕し、家屋を賃借当初と同一状態で維持すべき義務があるとの趣旨ではない、と判示されております。

要約すると、修繕義務は任意規定なので、特約で修繕義務の内容を定める事は出来るが、判例では条文の記載が曖昧だった為に条文が限定的に解釈されたので、特約に修繕義務を定める場合はなるべく具現化された分かりやすい条文を入れる必要があるとの事です。

別途注意すべき内容として、民法606条の任意規定とは別に、建物の賃貸人が「事業者」、賃借人が「消費者」の場合には、消費者契約法の適用を受けます。
消費者契約法8条には、事業者の債務不履行責任や瑕疵担保責任を免除する規定は無効とすると定められておりますので、消費者契約の場合には、特約の効果が否定される可能性もあるとの事でした。

進めていた案件は、売主様が個人で買主様も個人だったので、消費者契約の適用が無かったので、賃貸人・賃借人合意の上進める事が出来ました。

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一括貸しのサブリース契約も、賃借人であるサブリース会社が修繕義務を負う契約内容も有りますが、同じようなケースだと思います。
契約内容の条文を作成する場合は、お互いが合意したとしても、条文が無効になる事もありますので、注意する必要があります。

※上記内容はあくまで、固有案件についての弁護士の見解であり、すべての案件に適用されるものではございませんので、ご注意ください。