2016年2月17日

【民法改正案】  「民法の一部を改正する法律案」の閣議決定

スタッフコラム(重原)

この記事は 5分40秒 程で読んで頂けます。

少し前の話題にはなりますが、2015年3月31日に「民法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。

 

不動産売買や賃貸においても影響は出てくるかと思いますので一つコラムで取り上げさせて頂きます。

 

これまでは現在の社会・経済の変化に対応しきれておらず条文を読んだだけでは難解で判断できず、分かりにくい部分が多々ありました。

 

私も、管理の業務上民法に目を通すことも多くあり、「ん?」となって顧問弁護士さんに相談したこともよくありました。

それもそのはずで、民法は明治29年に制定されており、約120年前から抜本的に改正されていなかったのです。

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そこで改正法では、より実務的に、できるだけ明確化された「国民へのわかりやすさ」がテーマとなっておるようです。

今回は今後の賃貸借契約において実務上影響が出てきそうな部分を見直してみたいと思います。

 
まずは

敷金の返還時期について

(改正内容)

賃貸人が、敷金から賃借人の債務を控除した残額を賃借人に返還しなければならない時期は、賃貸借契約が終了しかつ物件の返還を受けたとき、又は、賃借人が適法に賃借権を譲渡したとき。

敷金の返還時期は、契約を終了した時では、物件の返還を受けたときということが明記されました。

 
まず敷金返還の実務のご説明ですが、

解約通知を受領して、期間満了を迎え契約終了し退去の立会を行います。

その際に双方確認しながらお互いの負担部分の確認を行い、賃借人の負担金額を算出します。

 

その後、原状回復を行い、その費用の内から借主負担分を預かっていた敷金から差し引いて返還する事が通常の流れです。
ここでもし、法改正後に賃貸借契約書に敷金返還時期を具体的に定めず、契約を結んでしまったとするならば、明け渡し完了後、貸主が原状回復を行う前でも敷金返還を借主側が求めればそれは借主サイドとすれば当然の主張ですので貸主は応じなければいけません。

 
そのような場合、敷金を全額返還して、原状回復の内、賃借人負担分の請求を行い、賃借人に支払ってもらうという時間と手間がかかります、そしてもしかしたら払ってもらえないというリスクが発生してしまいます。
賃料滞納や原状回復によるトラブルが多発している昨今では、まっとうな請求を賃貸人サイドがしていても、納得してもらえず、払ってもらえないなんてことはよくありますので、そういうリスクはできるだけ回避しなければいけません。

 

敷金の返還時期について、しっかりと明記している契約書を使用しなければ今後は問題が起こりそうです。

 

弊社でも様々な物件を管理しておりますので、いろんな賃貸借契約書を見てきましたが、返還時期について明確に記載されていない契約書は多いです。
契約書のひな形の見直しも検討してみてはいかがでしょうか。

 

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緊急時の修繕の費用負担について

(改正内容)

賃借人は、次の場合は自ら修繕できる。

・修繕が必要なことを賃貸人に通知してから、又は賃貸人が修繕が必要なことを知ってから、相当期間が経過しても賃貸人が修繕しないとき。

・急迫の事情があるとき。

 
「相当期間が経過しても賃貸人が修繕しないとき」これは賃貸人にも非がありますので致し方ない部分もあると思いますので置いときますが、何らかの理由で、賃貸人に連絡がつかずに賃借人が自ら業者を手配し、その緊急事態に至ったそもそもの原因がわからず責任の所在が分からなくなってしまったり、その工事が原因で、二次的な被害が発生して費用負担について揉めてしまう事もしばしば耳にします。

 
オーナー様にとっては、いくら緊急であっても建物の所有者である以上、施行内容などのわからない工事は避けたいですし、内容によってはリスクもあります。

変な工事をされて取り返しのつかない事にはなりたくないので容認はしにくいものかと思いますしそんなことがないようにするべきだと思います。

これについては、オーナー様の方ですべて対応できるようにコールセンターを整備したり、管理会社に委託するなど、未然に防ぐ準備をしていた方が良いと思います。

自主管理オーナー様、管理会社に委託しているオーナー様も一度、緊急対応の受け皿の部分を再確認されてはいかがでしょうか。

 

 

連帯保証人の極度額の明確化について

(改正内容)

個人根保証(不特定債務について個人が保証人となる保証)は、保証人が責任を負う最大額(極度額)を定め、かつ書面又は電磁的記録で契約されなければ無効となる。

不動産の賃貸借契約において連帯保証人を付帯することは、ほぼ標準の行為です。

この改正法では、連帯保証人をつけるにあたり、極度額を決めて書面に記載しなければ無効になってしまうかもしれないということになります。

そもそもその極度額っていくらが妥当かなどの疑問は出てきますが、いずれにしても極度額が決まるので、債権債務がはっきりしますので、メリットになる部分もあるかと思いますが具体的な金額が明示されることで連帯保証人になる事を躊躇する方も出てきたりとデメリットになる部分もありそうです。

 
今後、保証会社の契約ニーズというのはもっと高まる傾向が出てくるかもしれません。

保証業界の競争が加熱して各保証会社の保証内容もより充実されたものになるかもしれませんし逆に、保証料が一律で高くなったりして、入居者負担が多くなり物件契約の敷居が高くなってしまったりと賃貸業界に少なからず影響は出てくるのではないかと思います。

 
いずれにしても、この民法改正については、オーナー様はもちろんの事、管理会社、賃貸仲介業者もしっかりと情報収集して、来る施行に向けて備える必要はあるかと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。

 

民法改正について詳しいことは、弁護士の先生に確認して頂ければ幸いです。

売買でも管理でもご相談はいつでもお気軽にお問い合わせくださいませ。