この記事は 4分29秒 程で読んで頂けます。
まず賃貸住宅の市況についてあるポータルサイトのアンケートより、賃貸志向の高まりが見られました。
「今後も賃貸住宅に住むつもり」または「条件次第では賃貸住宅がよい」と回答した人の合計は、調査開始以来初めて6割を超える結果となりました。
賃貸志向が高まった要因を探るために、近年ポイントが上がった理由を見てみましょう。
●転勤の可能性
2009年度 28.4%
2010年度 27.1%(前年比 1.3%↓)
2011年度 39.1%(前年比 12.0%↑)
●買うよりも借りる方がお得だから
2009年度 25.8%
2010年度 26.0%(前年比 0.2%↑)
2011年度 28.8%(前年比 2.8%↑)
これは分譲マンションの単価がここ2年ほど横ばいの中、家賃相場は下落傾向が続いていることが原因のようです。
●長期にわたり住宅ローンを抱えたくないから
2009年度 17.8%
2010年度 20.1%(前年比 2.3%↑)
2011年度 19.7%(前年比 0.4%↓)
●頭金を用意するのが大変そうだから
2009年度 13.8%
2010年度 12.5%(前年比 1.3%↓)
2011年度 16.7%(前年比 4.2%↑)
上記2つの要因のように、金銭面を不安視する傾向も見られます。長引く不況による不安定な収入が持家を遠ざける原因の一つとなっているようです。
●地震や火災などの災害が不安だから
2009年度 4.4%
2010年度 15.4%(前年比 11.0%↑)
2011年度 12.4%(前年比 3.0%↓)
東日本大震災後に上記ポイントが大きく上昇しました。昨年度は3.0%下落したものの、震災前から比較するとまだまだ地震などへの不安は大きいようです。
持家が液状化で二重ローンを抱えた…などの報道による影響でしょうか。
さらに「部屋探しの条件」でも、耐震性・耐火性の重視度が震災以降は急上昇し、震災から1年半が経過した現在も耐震志向が根強いようです。
では需要の高まりを見せている賃貸住宅ですが、ここ数年の間に注目を集めている”賃貸住宅のリフォーム・カスタマイズ”を希望する割合がなんと4割を越えました。
リフォーム・カスタマイズとは、設備の部分的な交換や造作工事等を、入居者が自分の好きな様にリフォームを行う事で、近年注目されている方法です。
以下は、リフォーム・カスタマイズを
「全額自己負担でもやってみたい(やったことがある)」と
「一部自己負担(例えばオーナーと折半)であればやってみたい(やったことがある)」と回答した方々の希望する内容と、許容負担額平均額です。
実施内容 | 許容負担額平均 | |
1位 | 照明を好みのものに変える | 11,976円 |
2位 | 壁に棚板をつける | 8,356円 |
3位 | トイレを温水洗浄便座にする | 20,787円 |
4位 | 部屋のサイズに合った作り付け収納をつける | 21,598円 |
5位 | 鍵を交換、追加する | 8,644円 |
調査対象は関西圏(回答数:420)
このように、自己負担をしてでもカスタマイズしたい設備があるようです。
ただし「原状回復義務」や「敷金が引かれる」金銭面についてはシビアな結果が出ています。
実施したことがないと回答した403人のうち、実施意向がある割合は41.2%
その41.2%の内訳は
『原状回復しなくてよい/敷金がひかれない』ならばやってみたい 39.7%
『原状回復を求められる/敷金がひかれる』としてもやってみたい 1.5%
実施したいという意向がある人のうち約96%もの割合が『原状回復しなくてよい/敷金がひかれない』ならばやってみたいという回答となっています。
逆に考えると、「元に戻さなくて良いならば、自己負担してでも好きな部屋に改装したい」という潜在ニーズが高いとわかりますね。
オーナーにとっても、今までになった方法で不安が残るとは思いますが、できる箇所とパターンを限定する方法もありますし、築年数の経過した物件の空室対策として“全面改装OK”と提案すれば、オーナーは出資せずとも物件がバリューアップし、次の入居者へのアピールポイントになる可能性もあります。
借り手市場などの社会構造の変化やリフォーム・カスタマイズのニーズの高まり等、臨機応変に対応していくことが不動産運営の重要ポイントではないでしょうか。
データ参照 : 株式会社リクルート「2011年度賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査(関西版)」