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皆様は、現在進んでいる円高が商業用不動産市場にどのような影響をもたらすかお考えになった事はありますか?
まずは為替変動と商業用不動産の相関関係について基本的なことをご説明しましょう。
リーマン・ショック後に日本の商業用不動産価格は急落しました。一方でその下落率以上に円高になっています。
具体的には、東証Jリート指数が最高値圏にあった2007年5月の円/米ドルは122円前後、現在の円/米ドルは79円前後と5年のうちに円は米ドルに対して1.5倍も切り上げてきました。
数字上の理屈でいうと、国内投資家は不動産価格の下落分だけ評価損失を被りましたが、外資系投資家の場合は仮に不動産簿価が100億円、不動産時価が80億円でも30億円の評価益(米ドルベース)が出る計算になります。
この理屈はJリート市場にも通用します。
外資系投資家によるJリート投資は取得時投資口価格より現在投資口価格が低くても米ドルベースでは評価益になることが起こり得るのです。
では円高の環境下で外資系投資家が新規の不動産投資についてどのような戦略を練っているか想像してみましょう。
例題を設定してご説明すると投資対象「新大阪ビル(仮名)」
2007年当時の鑑定評価額10億円、当時の円/米ドル120円。
2012年6月時点の鑑定評価額8億円、円/米ドル80円。
2007年に「新大阪ビル(仮名)」を外資系投資家が購入していたら…
10億円 ÷ 120円 ≒ 833万米ドル
今購入すると…
8億円 ÷ 80円 ≒ 1000万米ドル
つまり、外資系投資家が5年前に比べて20%下がった「新大阪ビル(仮名)」の購入を検討したとしても価格の下落以上に円高が進んだ影響で1.2倍(米ドルベース)の金額を用意しなくてはならないということです。
日本の商業用不動産は底値圏と言われていますから、8億円以下に買い叩けるシナリオは考え難いでしょう。
仮に1000万米ドルで購入してさらなる円高を待ってから売却する為替差益戦略をとるとしましょう。
円/米ドル65円になった時点で簿価(8億円)売却すると…
8億円 ÷ 65円 ≒ 1230万米ドル となり、取得簿価の1.23倍(米ドルベース)になりますが、今以上の大幅な円高もやはり考え難いでしょう。
現在、外資系投資家はこぞって東京の商業用不動産への再参入に虎視眈々のポーズをとっていますが、現在の円高環境では、実際には身動きが取り難くなっているのではないでしょうか?
しかし、世界最大の商業用不動産マーケットである東京市場は大量の真水外資が流れ込んでこない限りは活性化しません。まして物件価格が上昇することなど期待できません。
商業用(投資用)不動産の価格は、大型物件マーケットが活況にならなければ、全体の市況も停滞したままです。
今の円高環境がどのようになっていくのか?
注視する必要がありますね。