2012年9月5日

【判例】  瑕疵による損害賠償請求権の有効期間

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今週は不動産取引におけるトラブルの代表的な原因の一つである「瑕疵」の請求期限についてお知らせ致します。

 

不動産の取引では、消費者保護のため、売主が宅建業者の場合に限り瑕疵担保責任の期間を2年とし、かつ当事者の合意があっても免責とすることが出来ないとされています。

 

さらに、平成12年に制定された「住宅の品質確保の推進に関する法律(品確法)」では、建物の構造耐力上主要な部分または雨水の侵入を防止する部分については、瑕疵担保責任の期間を10年とし、かつ、当事者の合意があっても免責とすることができないとしました。

 
こうした法令の整備によって、消費者(買主)の保護はある程度図られています。

 

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しかし、売主側の立場で考えると、民法上では「損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない」と規定されており、逆の言い方に変えれば、瑕疵を発見すれば取引後何年たっていても、瑕疵担保責任の追及をする事が出来るという事になり、「売主はいつまでたっても瑕疵担保責任を追求される可能性が無くならない」という事になります。

 

そこで、買主の売主に対する瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権が、目的物の引渡後10年の消滅時効にかかるとされた事例をご紹介しましょう。

 

瑕疵担保責任の消滅時効に適用について争われた事例で

平成13年11月27日の最高裁の判決は

① 瑕疵担保による損害賠償請求権が民法167条1項にいう「債権」にあたることは明らかであること

 
② 買主が事実を知った日から1年という除斥期間の定めは、法律関係の早期安定のために買主が権利を行使すべき期間をとくに限定したものであるから、除斥期間の定めがあることをもって、消滅時効の規定の適用が排除されるとはいえないこと

 
③ 買主が目的物の引渡しを受けた後であれば、遅くとも通常の消滅時効期間の満了までの間に瑕疵を発見して損害賠償請求権を行使することを買主に期待しても不合理でないのに対し、消滅時効の規定の適用がないとすると、買主が瑕疵に気づかない限り、その権利が永久に存続することになる。

これは売主に過大な負担を課するものであって、適当とはいえないとこと

 

などを理由に、「引渡後10年を経過したときは、買主が瑕疵の事実を知った時から1年以内であっても、売主は消滅時効を適用して損害賠償請求を拒絶出来る」とされました。

 

ところが、瑕疵による損害賠償請求権が20年に及ぶケースが出ました。

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平成23年2月17日に出された判例では
買主が物件を取得した際に、接道義務を満たしていないため再築不可の土地である旨の説明を受けておらず、購入から15年が経過して初めて事実を知りました。

 
買主は、本件建物が建築基準法に定める接道義務を満たしていないとし、売主と仲介業者に対し、不法行為に基づき損害賠償を請求しました。

 

それに対し千葉地裁の判決は「不法行為の時から20年」(民法724条)が経過していないことを理由に、不法行為に基づく損害賠償を認めました。

 

2つの判例から言えることは
1) 瑕疵ある不動産を売却した場合、買主が目的物の引渡しを受けたときから10年を経過するまでは、売主の故意過失と関係なく損害賠償を請求することができる
  ※瑕疵に気づいた時から1年以内に請求しなければならない

2) 20年を経過するまでは、売主の故意過失を証明できれば、損害賠償を請求することができる
  ※損害を知ったときから3年以内に請求しなければならない

 

つまり売主は、不動産に瑕疵があったとして損害賠償請求を受ける危険性が、長い期間に及ぶ可能性があるということです。

 

契約前には瑕疵の有無確認や重要事項説明等に十分に留意し、トラブルを未然に防ぐことをおすすめします。