2012年12月19日

【判例】  定期借家期間満了後の退去通知は有効か

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まず定期借家期間とは
契約の更新がない賃貸借契約で、契約期間が終了した時点で確定的に契約が終了し、確実に明け渡しを受けることができます。

また双方の合意で契約期間は自由に定めることができます。
契約期間を確定的に定めた上で、公正証書等の書面によって契約することが必要です。

また、契約書とは別にあらかじめ説明する書面を交付して、契約の更新がなく、期間の満了とともに契約が終了することを借主に説明しなければなりません。

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今回お話する題材は「退去通知」についてです。

 

契約期間が1年以上の定期借家契約の場合、期間満了の1年前から6か月前までの間に、賃貸人は賃借人に対して、賃貸借契約が終了する旨の通知をしなければなりません。

更に、通知期間経過後であっても、期間満了前に通知すれば、その通知の日から6か月経過後に賃貸借契約を終了させることができます。

 

では、期間満了後に通知する場合はどうなるのでしょうか。

 

期間満了後の通知について争った事例をご紹介しましょう。

 

平成21年3月19日東京地裁の判決です。

期間満了後に通知を出した事案において、裁判所は

① 『定期建物賃貸借契約は、期間満了によって確定的に終了し、賃借人は本来の占有権限を失う』としたうえで、
② 賃借人に対し終了通知がされてから6か月後までは、明渡しが猶予されるが、このことは、契約終了通知が期間満了前になされたか、期間満了後になされたかで異なるものではない、としました。

 
従って、契約終了通知を失念し、期間満了してしまった場合であっても、その満了後に通知をすれば、6か月後には、賃借人に退去してもらえるとの判断をしました。

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ただ、そうすると問題となるのは、賃貸人が、定期借家契約の終了時期を自由にコントロールすることができるようになってしまうことです。

 
つまり、老朽建物の将来の建て替えのために定期借家にしていたところ、景気が低迷したので、しばらく様子見をし、定期借家をそのまま放置し、それから数年たって賃貸人に都合のよい時期に、賃貸人が賃借人に契約終了通知を出せば、その6か月後には無条件で、賃借人に退去してもらえるという事になってしまいます。

 

この問題については「期間満了後、賃貸人から何らの通知ないし異議もないまま、賃借人が建物を長期にわたって使用継続しているような場合には、黙示的に新たな普通建物賃貸借契約が締結されたものと解し、あるいは法の潜脱の趣旨が明らかな場合には、一般条項を適用するなどの方法で、統一的に対応するのが相当」という考えもあるようです。

 

黙示的に普通建物賃貸借が成立してしまえば、正当事由がなければ、賃借人に退去してもらうことはできません。

 

このように賃貸人側と賃借人側双方に不利益が出ないような措置がとられていますが、如何せん最高裁の判断が出されておりません。

はっきりと結論が出されていない以上、賃借人とのトラブル防止のためには、期間満了前には通知を出すように注意された方がよいでしょう。