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2013年度予算では、公共事業費が前年度の4.6兆円から15%増の5.3兆円規模となり、昨年度の補正予算と合わせると総額10兆円超の公共事業が始動しました。増税前の駆け込み需要や震災復興で、新築・改修工事、公共工事が佳境を迎えている他、住宅建築も増加しているため内装工事も増加しています。
また、病院や介護施設などの福祉関連施設の建築や設備投資に伴う工事など、官公庁や自治体だけでなく、民間からの発注も好調に推移しています。
しかし一方で建設労働者不足に伴う建設コストの高騰や、円安に伴う資材価格の高騰などにより入札が不調に終わるケースも見受けられます。その他、今春に消費税増税後の反動減など懸念材料も多くあります。
以上の現状から、全国の上場建設会社59社の動向調査を見てみましょう。
調査元 : 帝国データバンク
対象 : 全国の上場建設会社
時期 : 2013年度第2四半期
項目 : 単体ベースの受注高、連結ベースの売上高、売上総利益、経常損益
前年同期との比較・分析を行いました。
まずは受注高について見てみましょう。
調査対象の59社のうち、前年同期との比較が可能な45社の単体ベース受注高合計は、5兆8302億6000万円となり、前年同期比43.8%増と大幅な増加となりました。昨年度同時期は2.4%増にとどまっており、今年度の43.8%増は大きな変化と見られることがわかります。
受注高増減率上位5社は
1位 大本組 135.8%増
2位 戸田建設 109.4%増
3位 鹿島建設 81.5%増
4位 五洋建設 80.5%増
5位 西松建設 79.9%増
減少したのは5.2%減と2.2%減の2社のみにとどまり、45社のうち43社が増加した結果となりました。
上位10社は、民間受注の増加が鮮明となっており、前年比100%を超えている企業が6社ありました。45社のうち、官・民・海外などの内訳が判明している建設会社は37社、そのうち8割強の28社で官公庁工事が増加、9割強の34社で民間工事が増加するなど、官民ともに建設市場の拡大がうかがえる結果となりました。
受注高は一昨年と比較して41.4%増と大幅にアップしましたが、一方で売上高は4%増にとどまっており、まだ受注の増加が売上に寄与していないことがわかります。ただ受注高はゼネコンの業績の先行指標と見られるため、来年度以降売上高が増加すると予想されます。
2013年度第2四半期の売上高(連結ベース)は、合計で5兆9000億1600万円(前年同期比9.8%増)となりました。
受上高増減率上位3社は
1位 金下建設 74.7%増
2位 大本組 39.8%増
3位 東洋建設 35.0%増
前年度は道路工事関係業者が上位に名を連ねましたが、今年度は第7位の大林道路のみとなり、建築工事の割合が高くなっています。
次に売上総利益は、合計で4431億7000万円(前年比16.3%増)となりました。また59社合計の売上総利益は7.5%となり、前年度の7.1%と比較するとほぼ横ばいの結果となりました。
なお、4割弱の23社で売上総利益率が悪化しました。その要因として労務費や資材など建設コストの高騰が利益率に影響したためと見られます。
売上総利益率上位3社は
1位 矢作建設工業 18.4%増
2位 第一建設工業 15.3%増
3位 ライト工業 14.4%増
次に経常損益の合計は1273億300万円(前年比131.8%増)となりました。
増収に加え、販売管理費削減、受け取り配当金の増加などの結果、増益や黒字転換、赤字幅縮小など9割弱の52社で損益が改善しました。
冒頭にお話した通り、増税前の駆け込み需要や震災復興により建設業界は盛況となりつつあります。さらに昨年12月4日に成立した国土強靭化関連3法による更なる政府の取り組みの強化や東京オリンピック関連工事、リニア中央新幹線と建設投資拡大につながる大型案件と右肩上がりが予想されます。
しかし、東日本大震災前までの建設市況の低迷から人員削減や若者の業界離れにより、人材不足が問題視されています。今後は更に労務費を中心とした建設コストの高騰、工事入札の不調、資材費高騰など、建設会社の懸念材料は多くあります。そのため、企業によっては売上高が増加しても利益率が悪化する可能性があるという声もあります。