2015年8月25日

立退き交渉の実例 (前半)

スタッフコラム(木下)

この記事は 3分32秒 程で読んで頂けます。

2年ほど前に立退きについてこのコラムでお話しした事が会ったのですが、やっと解決の目途が立ちましたので、その内容をお伝えしたいと思います。(詳細内容は少しぼかしています。)

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まず、案件の概要は
1.貸主がお持ちのかなり老朽化した建物に対する立退き交渉

2.借主は昭和10年頃から対象建物を使用されている

3.以前はその建物を店舗として使用していたが、現在は隣に自社で店舗を建て対象建物はその倉庫兼従業員さんの休憩所として使用している

4.古くからの契約の為、賃料は相場よりかなり安くなっている

5.過去に貸主と借主の間でトラブルがあり、関係は良好とはいえない

6.当初の契約当事者は亡くなられており、互いの認識にズレがある

7.現在の貸主は法人をM&Aで取得した為、過去の経緯を詳しく知らない

8.現在の賃貸借契約書はあるが、当初の契約から数十年は口頭の約束のみ

上記の様な状況で交渉が始まりました。

 

こちら側(貸主)としては、建物の老朽化が酷く今後使用を続けると危険である事、借主は現在ほぼ倉庫としてのみ使用しており、必ずしも対象建物が必要ではない事を理由に建物明け渡しを求めました。しかし、借主は建物は必要だとして立退きを拒みました。

そのため、こちらは賃貸借契約に則り6か月前に書面により更新拒絶を通知し契約の解除を求めましたが、借主はそれも拒み賃料を供託しました。

そこで、こちら側から建物(土地含む)がどうしても必要であれば、相場より多少安い金額で良いので買取りしてくれないかと持ちかけました。(相場より多少安くなっても立退き料や時間を考えるとメリットがある)

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しかし、借主はそれも資金的な都合により出来ないとの回答です。

もうこうなるとこの交渉のは着地点が見えません。
しかたなく、弁護士を立て通知書、内容証明へと進めますが、相手も弁護士を立て互いの言い分をぶつけ合うだけになってきます。
このままではらちが明かないので、訴訟へと踏み切りました。

まずは建物の老朽化により使用を続けるのは危険である事を証明する為に、土地家屋調査士と1級建築士による調査書と意見書の作成を行いました。その際に、現在の使用状況を確認し、店舗ではなく、住居でもなく倉庫として使用していることを確認しました。
更に、不動産鑑定士に依頼し現在の賃料が近隣相場に比べ格段に安い事、万一このまま使用を続けるには。建物の修繕費用がかなり高額になるので、現在の賃料で貸し続ける事は事業として成り立たない事を証明し、先方がかなりの長期間借り続けて貰っている事も考慮して、賃料の30ヶ月相当の高額な立退き料を提示しました。

 

それに対し借主側は、対象の建物は倉庫では無く、店舗の一部として使用しているので、事業が成り立たなくなり、地元に根付いた店舗なので近隣住民にも悪影響が出る。過去には対象建物の修繕も借主負担で行っていた事や、過去に支払って来た賃料の総額は修繕に掛る費用の数倍になる事、更に、週に数回は寝泊まりしているので借主には居住権がある。そのため貸主側からの一方的な契約解除は認められないと主張してきました。

 

ここまでで約1年が経過しています。

当初の賃貸借契約から数十年が経過し、当初の契約の当事者もその当時の事を詳しく知る人も誰もいない状況で、互いに昔に聞いた事がある話しや状況の推測からの主張で、互いの主張が全くかみ合わない事も多々ありました。

この後、更にややこしい主張が借主から出てきますが、まだまだ長くなりますのでこの続きは次回のコラムでお話ししたいと思います。