2016年12月2日

【判例】  反社会的勢力の建物明渡請求

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市営住宅の賃貸借契約において、「入居者が暴力団員であることが判明した場合には明渡請求ができる」との市営住宅条例の条項がありました。
それに基づき、市が暴力団員であることが判明した入居者に対して明渡を請求したのに対して、入居者が憲法14条1項(法の下の平等)及び22条1項(居住の自由)違反を主張して争った上告審において、憲法に違反しないとして、市の明渡請求が認められた事例です。

 

<事案の概要>
被上告人A市は、平成17年8月、A市営住宅条例の規定に基づき、市営住宅のうちA市が所有する住宅の入居者を上告人とする旨決定しました。
本件条例46条1項柱書は「市長は、入居者が次の各号いずれかに該当する場合において、当該入居者に対し、当該市営住宅の明渡しを請求することができる。」と規定しているところ、A市は平成19年12月、A市営住宅条例を改正し「暴力団員であることが判明したとき(同居者が該当する場合を含む)。」との規定を設けました。
A市は平成22年8月、上告人に対し、その両親である上告人2名をA市住宅に同居させることを承認しました。
その際、「名義人又は同居者が暴力団員であることが判明したときは、ただちに住宅を明渡します。」との記載のある誓約書をA市に提出しました。

 

justice concept, selective focus on nearest part ,lens blur f/x

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またA市条例によれば、市営住宅の入居者又は同居者のみが当該市営住宅の駐車場を使用することができ、入居者又は同居者でなくなればこれを明け渡さなければならないところ、A市は同年9月、上告人の両親に対し、A市営住宅の同居者であることを前提に駐車場の使用を許可しました。
A市は平成22年10月、警察からの連絡により駐車場を使用している上告人が暴力団員である事実を知りました。
そこで、A市は同月、上告人に対し本件規定に基づいて同年11月30日までにA市営住宅及び駐車場の明渡しを請求しました。

結果、1審ではA市の主張を認め、2審も上告人の控訴を棄却したため、上告人が上告しました。
<判決>
最高裁は、上告人の請求を棄却しました。
1.上告人の主張は
・本件規定は合理的な理由のないまま暴力団員を不利に扱うものであるから、憲法14条1項に違反する
・本件規定は必要な限度を超えて居住の自由を制限するものであるから、憲法22条1項に違反する
・暴力団員である上告人は近隣住民に危険を及ぼす人物ではなく、同居者の上告人2名はそれぞれ身体に障害を有しているから、A市住宅及び駐車場の使用の終了に本件規定を適用することは憲法14条1項又は22条1項に違反すると主張する
2.地方公共団体は、住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤であることに鑑み、低額所得者、被災者その他住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保が図られることを旨として、住宅の供給その他の生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策を策定し、実施するものであって、地方公共団体が住宅を供給する場合において、当該住宅に入居させ又は入居を継続させる者をどのようなものとするのかについては、その性質上、地方公共団体に一定の裁量があるというべきである。

 

そして、暴力団員は集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体の構成員と定義されているところ、このような暴力団員が市営住宅に入居し続ける場合には、当該市営住宅の他の入居者等の生活の平穏が害されるおそれを否定することはできない。
他方において、暴力団員は自らの意思により暴力団を脱退することにより暴力団員でなくなることが可能であり、また暴力団員が市営住宅の明渡しをせざるを得ないとしても、それはA市営住宅には居住することができなくなるというにすぎず、A市営住宅以外における居住についてまで制限を受けるわけではない。

 

 

以上の諸点を考慮すると、本件規定は暴力団員について合理的な理由のない差別をするものということはできない。
したがって、本件規定は憲法14条1項に違反しない。

 

また、本件規定により制限される利益は、結局のところ社会福祉的観点から供給される市営住宅に暴力団員が入居し又は入居し続ける利益に過ぎず、上記の諸点に照らすと、本件規定による居住の制限は、公共の福祉による必要かつ合理的なものであることが明らかである。
したがって、本件規定は憲法22条1項に違反しない。

 

そして、暴力団員である上告人は他に住宅を賃借して居住しているというのであり、これに上記記載の誓約書が提出されていることなども併せ考慮すると、その余の点について判断するまでもなく、A市営住宅及び駐車場の使用の終了に憲法14条1項又は22条1項に違反することになるものではない。

 

最高裁判決 平成27年3月27日